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2026/05/28

業界展示会の知見を学会へ

―併設展示の価値を高める空間設計

ポスター画像
学会名 第69回日本形成外科学会総会・学術集会
会 期 2026年4月22日(水)~24日(金)
会 場 あわぎんホール JRホテルクレメント徳島、
ザ・グランドパレス徳島
参加人数 2,800名

業界展示会の担当者が、学会併設展示会を運営して見えてきたこと
―第69回日本形成外科学会総会・学術集会併設展示会―

私はこれまで、学術集会の事務局業務と、BtoBの業界展示会の運営、その両方を経験してきました。今回、第69回日本形成外科学会総会の展示運営を担当するにあたって大切にしたのは、「業界展示会運営で培ったノウハウを、学会ならではのルールや参加者の皆様の過ごし方に合わせてどう最適化するか」という視点です。

学会併設展示会ならではの面白さや難しさ、そして私が実践した空間設計や参加者エンゲージメントを高めるための工夫と成果について紹介します。

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今回の学会併設展示会の運営担当者

プロフィール

石川 幸雄
JTBコミュニケーションデザイン
コンベンション事業局

入社後、約5年間にわたり会議運営部門で学術集会の進行管理や事務局業務に従事。その後、主催展示会運営部門へ異動し、BtoBの業界展示会における出展者対応や会場設計など、展示会運営の実務経験を積む。現在は再び会議運営部門に所属しながら、受託展示チームの一員として、双方の現場で得た知見を組み合わせた柔軟な運営に取り組んでいる。

1. 学会特有の「目的の違い」と「来場タイミング(波)」を捉える

一般的な業界展示会では、来場者は「製品やソリューション探し」を目的に、一日かけて会場を回ります。しかし、学会の主役はあくまで「講演」です。参加者のスケジュールは分刻みで、展示会場に人が集まるのは講演の合間のわずか15〜20分という短い時間に集中します。これは、参加者が「知的な刺激」を求めて講演会場を移動する、まさにその「波」です。

この「波」を的確に捉え、限られた時間の中の一瞬のチャンスを逃さず、いかに質の高い出会いを提供できる環境を整えるか。新たな発見やインスピレーションを得られる場として展示会を位置づけること。これが学会併設展示会を成功させる最大の鍵となります。

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2. 会場制約を逆手に取る「2施設分散型」の運営戦略

本来であれば、この規模の展示は大規模展示ホールでの実施が理想的です。しかし、今回は施設規模の制約もあり、2つの施設に分かれて展示を行うことになりました。そこで、それぞれの建物の特性を活かした配置を検討しました。

一方の施設は口演会場が多く集まるため、主要な企業が集まる「プレミアム展示」エリアとして構成。もう一方の施設は、各フロアの会議室を利用するため、ブースが各部屋に点在する形となりました。

物理的に展示が点在してしまうと、どうしても回遊性は悪くなりがちです。そこをどうカバーするかが、今回の大きな課題でした。

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2施設を活用した展示レイアウトと動線計画

3. 「点在」を「偶然の出会い」に変える仕掛け

バラバラに配置された展示室を、参加者に楽しみながら巡ってもらうために、「偶然の幸運な発見」を誘発する空間設計の考え方を取り入れました。

その一つが、ドリンクコーナーの戦略的な配置です。各フロアに一息つける休憩スペースを設けることで、参加者が自然にフロアを移動する流れを作りました。
さらに、学会参加中でもパソコンやスマートフォンを使用する来場者が多いことを踏まえ、休憩スペースの全テーブルにコンセントを設置しました。これにより、参加者がより積極的に休憩スペースを利用し、その動線が会場内の回遊につながるよう設計しています。
また、スタンプラリーを「会場内を隅々まで歩いてもらうための案内役」として機能させることで、目的のブースだけでなく、歩いている途中で「これは何だろう」と関心を引き、ふと足を止めるきっかけを作りました。

展示が点在しているからこそ、業界展示会なら見過ごしてしまうような企業や研究内容とも偶発的に会話が生まれる。そんな「思いがけない出会い」を、空間全体でデザインしました。

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4. 「ほどよい密度」が賑わいと活気を生む

業界展示会の現場で学んだ「活気の作り方」も、会場設計に取り入れています。例えば、通路の幅。大規模な業界展示会だと3~4メートルの広い通路が定番ですが、今回は会場の大きさに合わせて、あえて通路を2.5メートルくらいに絞ってみました。

通路が広すぎると、人がまばらに歩いていると閑散とした印象を与え、ブースに立ち寄る事に心理的ハードルが生じます。あえて適度な密度を作ることで、会場全体に「賑わっているな」という空気を作り出し、出展社と参加者が自然に話し始められるような温かい雰囲気を目指しました。

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5. あえて「決めすぎない」、偶然の出会いを作る

もう一つの工夫は、製品のカテゴリーでゾーンをきっちり分けすぎなかったことです。現在は、インターネット検索により多くの情報が容易に取得できる時代だからこそ、リアルの会場の価値は「目的じゃなかったものとの出会い」、つまり「未来を拓く偶発的な発見」にあると考えています。

特定のコーナーだけを見て帰るのではなく、歩いているうちに「これは何だろう?」とふと足を止める。そんな、思いがけない出会いのきっかけを、会場のあちこちに散りばめてみました。これは、アカデミアにおける「異分野融合」や「オープンイノベーション」といった現代的な潮流にも通じる考え方です。

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6. 出展社の「熱量」に寄り添う運営

学会併設展示会の出展社は、限られた時間の「波」に合わせて、自社の技術や製品を通じて学会の発展に貢献したい、新たな出会いを創出したいという強い「熱量」を持っています。そのために驚くほど多くのスタッフを配置し、来場者との対話を心待ちにしています。

私は、そんな皆さんの熱意を間近で見て、運営側もただ場所を貸すだけでなく、一緒に学会を盛り上げる「共創パートナー」でありたいと強く思いました。

現場では、事務局が描く全体設計と出展社の意図をつなぎ、無理のない運営と展示体験の質を両立させることを意識しています。
あらかじめ設計された枠組みの中でも、現場状況を想定した細かな調整を行うことで、関係者全体が同じ方向を向き、「一体となって場をつくる」感覚を生み出すことができたと感じています。

この「共創」の精神こそが、単なる場所貸しではない、血の通ったイベント運営の核となります。出展社が安心して、そして情熱を持って参加できる環境を整えることで、その熱量は来場者にも伝わり、会場全体の活気へと繋がっていくのです。

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7. 業界展示会運営と学会運営、それぞれの良さを掛け合わせる

今回の運営を通じて、学会運営が持つ「公平性」や「信頼性」といった「安心感」と、業界展示会運営が持つ「人を動かすしかけ」や「ビジネスを創出するノウハウ」を掛け合わせることで、新しい価値が生まれることを強く実感しました。

学会という形式的な文化を大切にしながらも、そこに業界展示会運営の視点をスパイスとして加えることで、もっと活気があって面白い情報交換の場を実現できます。これは、現代社会が求める「知の交流」と「イノベーション創出」の場としての学会の役割を、さらに深化させる可能性を秘めていると確信しています。

私たちはデジタルも効果的に活用しながら、主催者および参加者の想いを形にし、出展社の皆様にも「参加してよかった」と思っていただける、そんな新しい展示のカタチを追求していきます。

協力

  • 「第69回日本形成外科学会総会・学術集会」
    会長 橋本 一郎 様(徳島大学医学部形成外科学 教授)
  • あわぎんホール
  • JRホテルクレメント徳島

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