- まちづくり・地域活性課題
- Case
2024.08.26
地方創生の新たな仕掛けづくりをプロデュース
JCDが一気通貫で手掛けた
JR東海×カプコンの大型観光プロジェクト
東海旅客鉄道株式会社(以下、JR東海)様は、「推し旅」キャンペーンを通して、新幹線で東海エリアを訪れた方が一度の来訪で終わることなく、継続的にその地域に訪れ、地域のファンにもなってくれるような企画を求めていました。JTBコミュニケーションデザイン(以下、JCD)がJR東海様のその想いにどのように応えたのか。株式会社カプコン(以下、カプコン)様をパートナーとした東海エリアの大型観光プロジェクト「CAPCOM TRIP TOKAI」を担当したメンバーが語ります。
- コンテンツの求心力を地方創生へ繋げるため、カプコン様をパートナーにプロジェクトを始動
- ファン心理を熟知したコンテンツホルダーとの共創 フィールドワークを行いながら企画を提案
- 鉄道会社、コンテンツホルダー、自治体とのマッチングも実現 見えてきた新しい地域創生のカタチ
- JCD各領域のスペシャリストとの連携でプロジェクトをトータルプロデュース
1 コンテンツの求心力を地方創生へ繋げるため、
カプコン様をパートナーにプロジェクトを始動
―まずは「CAPCOM TRIP TOKAI」を実施するにあたって、その経緯を教えてください。
深谷
JCDとJR東海様は、数十年にわたり旅を中心とした様々なプロモーションで連携してきました。JR東海様は、2021年からマンガ、アニメ、アーティスト、ゲーム、スポーツなど様々な業界の皆様と協業して、ファンの方々に「推し活」をより楽しんでいただく「推し旅」キャンペーンをスタート。その中で、当社は「CAPCOM TRIP TOKAI」において、新幹線車内のみで体験できる限定コンテンツの配信や、限定グッズがもらえるデジタルスタンプラリーなど、車内をエンターテイメント化し、楽しみながら目的地に向かってもらうためのコラボ企画を生み出しました。
林
JR東海様では地元企業や地域の観光スポット、飲食店や商店街、そしてそこに住む人々も一緒になって企画を盛り上げてくれるパートナーとなり、持続可能な地域創生のカタチを目指したいという想いをお持ちです。今回「CAPCOM TRIP TOKAI」を企画するにあたり、私たちJCDが強みとする地域活性や地方創生への取り組みと、ゲームメーカーとのシナジーを最大限に活かすことができるのではないかと考えました。
―株式会社カプコン様とタッグを組んだ背景は何だったのですか?
林
JCDはeスポーツ事業を展開しており、多くのゲームメーカーとの繋がりを持っています。今回タッグを組んだカプコン様とは、2021年に実施したデジタルコンテンツ「ストリートファイター×e-Travel熊本」で一緒にイベントを開催し、深い関係性を築いてきました。
カプコン様がゲームコンテンツの求心力を活かした地方創生の取り組みに関心を持っていることを知っていた私たちは、「推し旅」を通じて地域の魅力を知ってもらい、沿線のファンを増やすという点で共通するものがあると感じ、パートナーとして一緒に地域を盛り上げてほしいと提案。カプコン様が2024年に創業40周年を迎える節目の年で、契機となる施策を考えていたこともあり、過去に類を見ないJR東海×カプコンの大型プロジェクト「CAPCOM TRIP TOKAI」が実現することとなりました。
2 ファン心理を熟知したコンテンツホルダーとの共創
フィールドワークを行いながら企画を提案
―カプコン様とはどのように今回の企画を作り上げていったのですか?
林
まず、全体設計の協議段階では、「カプコン40周年」コラボレーションとして複数のゲームタイトル(ストリートファイター、モンスターハンター、逆転裁判、戦国BASARA、ロックマンなど)のIP(※)を使用する許可をいただきました。
※IPとはゲームタイトルやキャラクターなどの著作権を指します。
一般的には、代理店側が1ゲームタイトルの企画を提案し、IPを保有するゲームメーカーが、その企画内容を承認するという流れになります。しかしこのプロジェクトでは、ゲームファンが本気で楽しめる企画にしたいという想いから、ファン心理を知りつくしているカプコン様からアイデアを出してもらいながら、共創という形でJR東海様と一緒に企画を練り上げていきました。
深谷
企画段階では、旅行者の視点を持って一緒に地域を見て回り、地元の方と話しその思いを汲み取り、食やアクティビティを体験するフィールドワークを実施。地域の魅力に触れながら、ファンの方々に喜んでいただけるアイデアを共有し合いました。
その結果生まれたのが「カプ旅ステッカー」です。これは、カプコン様のゲームキャラクターが、名古屋や豊橋、蒲郡の観光地や名産品を紹介するオリジナルのコラボステッカーです。実際に現地で面白いと思ったものを取り入れたからこそ、ファンの方々に喜んでもらえる企画に仕上がったのだと思います。
林
ゲームメーカーが代理店と一緒に企画を考えたり、フィールドワークをしたりするケースはとても珍しいことなんですね。ですが、キャラクターに観光地や名産品を紹介させるには、その特長をキャラクターの個性に合わせる必要があり、そのためには現地を実際に見て、感じ、触れることが不可欠でした。カプコン様もとても楽しみながら取り組んでいただき、自分たちのキャラクターを通して一緒に企画を盛り上げようとしてくれたことは、本当に嬉しかったですね。
3 鉄道会社、コンテンツホルダー、自治体とのマッチングも実現
見えてきた新しい地域創生のカタチ
―「カプ旅ステッカー」のほかに、実施した企画内容を教えてください。
深谷
「CAPCOM TRIP TOKAI」では、新幹線車内のみで楽しめる限定コンテンツや企画に参加すると貰える限定グッズなどのほか、各地域で楽しんでいただける企画を3回に渡って実施しました。第1弾(2024年2月1日~29日)では、カプ旅ステッカーのイラスト展「THE CAPCOMミュージアム in 名古屋」を愛知県名古屋市で開催。第2弾(2024年3月2日~5月6日)は愛知県蒲郡市にあるラグーナテンボスで、第3弾(2024年4月24日~7月31日)は愛知県豊橋市でそれぞれ新たなコラボ企画を開催しました。
林
蒲郡市での現地企画第2弾では「ストリートファイター6」とコラボしました。ラグーナテンボス内の大型ホールを使い、ゲーム内で展開されているプレイヤーたちの交流の場「バトルハブ」を再現した新体験型アトラクション「リアルバトルハブ in ラグナシア」を企画。これも、実際の会場をプロデューサーと見て回った際に「この会場で何をやったらファンが喜ぶのか?」と、アイデアを出しあい、ディスカッションしながら生まれた企画です。
難波
「リアルバトルハブ in ラグナシア」の開催にあたっては、モニターやパソコン、ゲーミングチェア、コントローラーなど会場設備や来場者へのお土産品をスポンサー企業に提供してもらったほか、多くの企業様からの協賛をいただいて、週末にトーナメント大会や団体戦を開催しました。カプコン様の協力もあり、このようなスポンサー企業の募集から協賛までの取り仕切りもJCDが行いました。2カ月間にわたるBtoCイベントの運営は個人的にも新たな気づきがありました。
さらに、豊橋市での現地企画第3弾「豊橋へ 一狩り行こうぜ!」は、世界中に多くのファンをもつ「モンスターハンター」とのコラボレーションです。JR豊橋駅や市内各所にゲームキャラクターを展示したほか、路面電車や市公用車のラッピング、地元名産品のパッケージにイラストを施したり、市内200店舗以上の飲食店で抽選会の引換券を配ったりなど、まさに街全体をジャックしました。この規模感から、新聞やテレビのニュース、バラエティ番組にも取り上げられています。
この企画の実施にあたっては、豊橋市の観光プロモーション課をはじめとする地域の皆さんとも深く連携しており、JR東海様とコンテンツホルダー、そして自治体との新たな地方創生の型が生まれたのではないかと思います。
4 JCD各領域のスペシャリストとの連携で
プロジェクトをトータルプロデュース
―「CAPCOM TRIP TOKAI」はクライアント、パートナー企業であるカプコン様、自治体、地元事業者など、多くの方々が関わる大型プロジェクトだったかと思います。成功した要因を教えてください。
深谷
「CAPCOM TRIP TOKAI」は、JR東海様としても過去にない大規模で長期的なプロジェクトでした。JCDでもプロジェクトメンバー一人一人が個性を発揮しながら確実に役割を全うすることで、IPをフックにした観光プロモーションの成功事例になったのではないかと感じています。
林
今回のプロジェクトでは、それぞれのランディングページの作成や、SNSでの発信、各事業者との細かな調整など業務が多岐にわたりました。それらすべてをJCDが事務局として担当しています。それが可能だったのは、JCDに多様な領域のプロフェッショナルがいたからだと考えています。
深谷
アカウントディレクターの私、イベントプロデューサーの難波、IPコンテンツディレクターの林をはじめとする多くのメンバーがこのプロジェクトに携わっています。JCDには、クリエイティブディレクターやアートディレクター、コピーライター、WEBコンテンツディレクターなどのスペシャリストが集まっているからこそ、ここまで一気通貫でプロジェクト運営を手掛けることができたと思います。
難波
企業の周年、式典・表彰式、パラスポーツやエンタテインメント、ツーリズム関連の大規模展示会など、JCDでは多様な事業を手掛けてきましたが、今回は観光プロモーションイベントに関わることができました。このプロジェクトのように、事業部の枠を超えてその道のプロたちをアサインし、ワンチームで課題解決できることがJCDの強みだと思います。これからも当社の強みを最大限発揮し、クライアントに新しい価値を提供していきます。