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- Case
2025.01.31
環境に配慮した広告ソリューション「E-OOH"カガヤク"」とは
再生可能エネルギーの普及につながる
サステナブルな屋外ビジョン広告で街の賑わいと企業ブランドの向上へ
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CO2排出量をはじめとする環境問題は社会全体で取り組むべき課題であり、広告業界も例外ではありません。多くの人が目にする広告だからこそ、サステナビリティの観点からのアクションの一つとして、JTBコミュニケーションデザイン(以下、JCD)では「E-OOH"カガヤク"」のサービス提供を2024年1月から行っています。屋外ビジョン広告放映時に消費する電力を算出し、同量のグリーン電力証書を発行することによって、環境に配慮した広告出稿を実現する「E-OOH"カガヤク"」は、JCDのオリジナルソリューションです。メイン担当者の二人が、CO2が排出されない再生可能エネルギーを使用した「E-OOH"カガヤク"」の開発背景や、未来を見据え環境に配慮すべく広告サービスについての想いなどを語ります。
屋外ビジョン広告にサステナビリティな観点で着目
―まずは「E-OOH"カガヤク"」の開発背景を教えてください。
廣瀬
渋谷や道頓堀などにある屋外ビジョン広告が撮影されているのをよく見かけると思うのですが、昨今では、あのビジョン自体が観光スポットの一つとして注目されています。JTBグループとの親和性が高いことから、この屋外ビジョンを活用したサステナビリティに関する取り組みができないかと考えたのがスタートラインです。
広告業界全体が環境問題への取り組みに積極的に参画している中で、具体的なソリューションの普及にはまだ余地があると考えていました。公共の場での広告は多くの人の目に触れるため、サステナビリティを推進するための重要な役割を担えると考えたのです。当社にはすでに環境配慮という観点にも重きを置いた、電気供給・グリーン事業の「CO2ゼロMICE®」(※1)や「CO2ゼロSTAY®」(※2)というサービスがあります。これらの領域を広告に適用できないかというアイデアを基に「E-OOH"カガヤク"」は誕生しました。
「E-OOH"カガヤク"」の名前の由来は、EcologyなOOH (屋外広告) を意味しています。"カガヤク"は街の魅力や賑わいを演出し、観光スポットとしても"輝く"デジタルサイネージのサステナブルな発展への願いを込めています。再生可能エネルギーの普及に貢献することにつながる広告活動によって、環境に対する積極的な取り組みを象徴して考案しました。2023年の開発時点に実施した市場調査の際には、スポンサーに「グリーン電力証書」を発行するというサービス自体が見当たらなかったので、新たな試みだと自負しています。
※1 CO2ゼロMICE®...イベントや会議で使用する電気をCO2が排出されない再生可能エネルギーに置き換えることができるサービスです。
※2 CO2ゼロSTAY®...ホテルや旅館などに宿泊することで生じたCO2排出相当量をカーボン・オフセットできるサービスです。
電気事業のノウハウを活かした新しい広告の形
―「E-OOH"カガヤク"」のサービス概要について教えてください。
廣瀬
このサービスは、デジタルサイネージのCM放映時に消費される電力相当分の「グリーン電力証書(※3)」を、スポンサー宛に発行するというものです。一定程度のCO2削減効果を目的とすることから、まずは東名阪主要都市を中心とする屋外大型ビジョンで展開し、CO2削減に効果があるとされる取扱額を設定しました。
石黒
グリーン電力の評価方法について、エネルギー関連の知見をもつメンバーと協力して、新たなスキームを構築しました。通常の電気を使ってCMは放映されますが、その消費電力分の証書購入費用が再生可能エネルギーの発電設備の維持や拡大などに活用されるというシステムです。
「グリーン電力証書」の最大の特徴はスポットで発行できる点です。屋外ビジョンを持つビルのオーナーではなく、屋外ビジョン広告のスポンサーに「グリーン電力証書」を発行するので、その企業自体が環境配慮への貢献者となり、社会的ブランドの価値向上につながると考えています。
廣瀬
屋外ビジョン広告に環境配慮という付加価値を設定することで、スポンサー側にとっては環境にやさしい広告活動のアピールになりますし、CO2削減への積極的な姿勢が企業の信頼性向上につながり、新たなファンを生み出す可能性があります。また、企業がSDGsや環境配慮に貢献しているとして、企業評価がさらに高まるなどのメリットも期待できると思います。
※3 グリーン電力証書...JCDは一般財団法人日本品質保証機構(略称JQA/ISO認証やJISマークなどを発行する第三者機関)に認証された証書発行事業者です。
社内が一丸となり広告業界の未来を切り開く
―さまざまな部署が携わって開発したソリューションだと思いますが、部署間ではどのように連携して取り組んでいったのですか?
廣瀬
このビジネスアイデアを実現化するにあたり、社内での連携は不可欠でした。私が所属する部署は広告プロモーション業務が専門ですので、市場・競合データを元にマーケティング分析及び事業計画の立案・作成を担当しました。しかし、消費電力や「グリーン電力証書」の取得等については専門の部署が所属する事業共創部の協力が不可欠でした。
石黒
私が所属するグリーン電力の取り扱いを得意とする部署に、廣瀬さんから「CO2ゼロソリューションを広告に適応できないか」という提案をいただき、「E-OOH"カガヤク"」の実現に向けて検証を始めました。プロモーション事業の開発担当者にレクチャーを行ったり、消費電力の計算方法に関する勉強会を開いたりもしました。実際に屋外ビジョンに使っている消費電力を計算したときは、こんなに電気を消費しているのかと驚きました。
廣瀬
さらに、社内への周知を図るため、クライアントに「E-OOH"カガヤク"」の提案書や媒体資料の作成、社内向けソリューション説明会などを実施しました。その結果、既存クライアントに積極的に紹介する社員も増えてきました。今後は新たなクライアントを獲得するため、マーケティングを強化しています。
「E-OOH"カガヤク"」の開発で未来につながるソリューションを提示
―どのような成果があがっていますか?
石黒
2024年1月に「E-OOH"カガヤク"」をスタートさせ、10ヶ月余りで9,000 kWhの「グリーン電力証書」を発行しました。これは一般家庭約2軒強分の年間電力消費量(※4)に相当します。
廣瀬
広告ビジネスの中でサステナブルな取り組みを考えたとき、この「E-OOH"カガヤク"」は新たなソリューションの一つとして未来を見据えたものになっています。まだ手探りの状況ではありますが、サービスの継続を当面の目標に、事業を発展させていきたいと思っています。
※4環境省:家庭でのエネルギー消費量について
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/kateico2tokei/energy/detail/01/
サービスの認知度を高め、広告業界全体に環境への取り組みの輪を広げたい
―事業発展のため、今後の課題について考えていることを教えてください。
石黒
「E-OOH"カガヤク"」の認知度が足りていないというのが大きな課題です。環境に配慮した取り組みを行っていても、認知されなければ意味がありません。逆に、多くの方に知っていただければ、市場が形成されていくと考えています。そのため、環境関連のイベントなどを通じて、積極的に情報発信を行っていく予定です。
廣瀬
広告会社は様々なアイデアを創出することがビジネスでもあるので、業界全体で環境に配慮したソリューションを開発する機運の一助になると良いと思っています。
まずは、「E-OOH"カガヤク"」の認知度を高め、既存のクライアントだけでなく新規のお客様に利用していただくこと。「広告でもこんな形で環境配慮に携われるのか」と日本でも周知され、それが当たり前の社会になれば、ひいては広告業界の発展につながるのではと考えています。
そのために、電力事業と広告会社の機能を有する私たちJCDは、環境に優しい屋外ビジョン広告「E-OOH"カガヤク"」によって"街の魅力‧賑わい"の創出に努め、メディアの価値向上に貢献して参ります。そしてこの未来志向の広告サービスで、より良い社会への実現を目指していきます。