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2018.07.30
「これからのコミュニケーションデザイン」対談 Vol.3
歴史あるゴルフブランドの「もったいない」を「自己紹介」で解消?
コミュニケーションを機能させるとは。
ビジネスにおけるコミュニケーションの中で、多くの企業の関心を集めるのが、ユーザーとのコミュニケーションです。企業が伝えたいことは、ユーザーに伝わっているのでしょうか。伝えるためには、どうしたらいいのでしょうか。プロモーションデザインの専門家2人に聞きました。<聞き手:菊入みゆき>
菊入開地さんと池田さんは、コンビを組むことが多いということですが、それぞれどのようなお仕事を?
開地お客様である企業の悩みや課題に対して、その解決策の方向性や枠組みを考え、具体的なプロモーションプランを提案する、という仕事です。
池田プロモーションにおけるクリエイティブは、ターゲットであるユーザーに「気付き」を与える役割です。ターゲットにインパクトを与えるビジュアル表現を企画制作するのが仕事です。
歴史あるブランドの「もったいない」を解消したい
菊入多くのプロジェクトを担当されているお2人ですが、今日は、ゴルフアパレルブランド、le coq sportif golf collection(以下、ルコックゴルフ)のプロモーションについてお聞きしたいと思います。
開地le coq sportifは、1882年創業の由緒あるスポーツブランドで、フランス最古と言われています。中でもゴルフブランドは、賞金女王となった鈴木愛選手やイ・ボミ選手などを始めとした数多くのプロゴルファーを抱え、そのデザイン性や専門性は高い評価を受けています。しかし、日本の若い年代の方々にはそのような印象が低く、既存ユーザーの年齢層が年々高くなる傾向に危機感をお持ちでした。歴史あるブランドとして既存ユーザーの支持を得つつ、新しいユーザーにアプローチしたい、という課題がありました。
菊入歴史の長い企業では、同じ悩みを持つケースも多いでしょうね。
池田この課題を聞き、いろいろな人にヒアリングをしました。ルコックゴルフのヘビーユーザーはもちろん、ゴルフをする人、少し興味がある人、まったく興味がない人、年齢層も様々な人に会って、ゴルフのイメージやルコックゴルフについて聞いたんです。で、思ったのが、すごく「もったいない」ということでした。
開地そう、「もったいない」と思いましたね。ルコックゴルフの伝統の魅力や、フランスを象徴するロゴのことや、製品に込められた思いなど、大切なことが伝わっていない。ファンはもちろんいますが、そういう好きな人にしか伝わっていない。それで、僕たちが提案したのが、「自己紹介」しましょう、ということでした。
「自己紹介」を考え抜く
菊入歴史あるブランドが「自己紹介」とは意外ですが、確かに、「自己紹介」はコミュニケーションの基本ですね。
開地ルコックゴルフを知らない人たちに「自己紹介」しましょう、ですし、ファンに対しても、あらためて、「これからこういう風に変わります」と「自己紹介」しましょう、ということです。
池田自己紹介するために、もう一度、ブランドの歴史、ロゴの持つ意味を考え直しました。ロゴのトリコロールカラーは、フランスという国の歴史、精神、価値観そのものです。それをゴルフに置き換えて、自己紹介のキーワードにしようと考えました。自由、Libertyは青、平等、Equalityは白、友愛、Loveは赤です。
これをゴルフに置き換えると、青は、ゴルフは自由なスポーツであることの象徴として「ゴルフの楽しみ方は自由であれ」というメッセージに。白は、平等なスポーツであることの象徴として「壁はいらない、ボーダレスに競い合え」、赤は、絆のスポーツであることの象徴として「プレーを通じて絆を深めよ」というメッセージとなります。
ルコックゴルフの「自己紹介」
Liberty・Equality・Love
菊入わぁ、ビジュアルのパワーはすごいですね! すごくインパクトある自己紹介です。友達になりたい(笑)。
冒険する、チャレンジする
池田ロゴマークの雄鶏も、新たに3色で展開するコミュニケーションロゴユニットを作りました。
ルコックゴルフのコミュニケーションロゴユニット
菊入雄鶏が三角のマークから出ています!
池田そうなんです。これは、けっこう冒険でした。普通は、ロゴマークはCIによりそのまま使うことが厳格に規定されています。でも、これこそ自由、Libertyの精神ですよね。チャレンジしてみたら、ルコックゴルフチームのみなさまに「おもしろい」と言っていただけて。
さらに先のキーワードを規定することで、赤い雄鶏は、ファッション性を伝える、白い雄鶏はゴルフブランドとしての専門性を伝えるなど、色によって役割を分けることもできたんです。
菊入ロゴ化することで、コミュニケーションが機能するようになったんですね。
開地新しいユーザーを獲得しにいくというタイミングでは、こういう新しさも必要だったと思いますし、もっともっと機能させていきたいと思っています。
菊入評判はいかがでしたか。
開地まずは、既存ユーザーに自己紹介することから始めていますが、ご好評をいただいていると思っていますし、少しずつ良い影響も出てきていると感じています。
ゴルフの敷居を下げたい
池田今年からは、ユーザーとの接点を増やすために、新しい視点を入れた試みを始めています。
ユーザーが「ゴルフをする1日」をイメージしてみたんです。すると、朝早く起きて、朝食を食べ、コースを回って昼食を食べ、というように、ゴルフにとって食事は意外に重要な要素じゃないか、ということに気づきました。これまで取り上げていた、プロのプレーを支える機能性やファッション性に加えて、食事というキーワードがあるんですよ、と。
そこで、料理研究家で、ゴルフが大好きというコウケンテツさんのご協力を得ました。竹村真琴プロがコウさんにゴルフのレッスンをし、そのお礼にコウさんがオリジナルのゴルフ料理でおもてなしをする。さらに、実際のゴルフ場とタイアップをしてコウさんのメニューを提供し、一般の方々にも味わっていただきました。そんなゴルフの楽しさ=「ENJOY GOLF」の世界感を、スペシャル動画コンテンツ「コウケンテツの至高のゴルフメシ」をサイトでオンエア中です。
菊入反応はいかがですか?
開地ゴルフにハードルを感じている人にも、「普通に楽しそうだな」と思ってもらえているようです。また、ルコックゴルフのファンがコウさんを知り、コウさんのファンがルコックゴルフを知り、と、「楽しさ」の価値が広がっていく相乗効果も出ていて、ゴルフの敷居を下げることに近づく企画になりつつあると思います。
菊入「自己紹介」がうまくいっているんですね。
プレゼンではあえて1人1人を見る
菊入当社の調査では、会社員の8割近くが「プレゼンが苦手」と感じています。
コミュニケーション総合調査<第3報>(JTBコミュニケーションデザイン)から作成
お2人は、企業へのプレゼンの機会が多いと思いますが、何がポイントでしょうか。
開地まずは準備ですよね。料理に例えると、自分では絶対おいしい、と思っても、相手が嫌いな素材が入っている場合もあります。いろいろなマーケティング活動を通じて、企業とそのお客様のことを知る。これにつきます。もちろん、営業と共に直接お伺いして「教えてください」とお願いすることもありますよ。
池田僕は、プレゼンの時、聞いてくれる人を1人1人、よく見ます。あ、こういう方々が聞いてくださるんだ、そうなんだ、と確かめて、じゃあ、こんなふうに話そう、と考えます。
菊入聞いている人の顔を見ると、よけい緊張してしまいませんか?
池田いや、そんなことはありません。どんな人が聞いているかがわからないと、逆に不安がつのる一方だと思いますよ。わかったほうが絶対にいいです。自分のどの言葉に、反応してくれるのかを見ながら、話すことがポイントです。
同調ポイントを仕込む、人となりを出す
開地相手が同調してくれると、リラックスできますよね。だから、同調してもらえるポイントを作るようにしています。たとえば、言葉遣いなども、相手がよく使うであろう単語をあえて使ったりします。
池田自分の人となりを出すところを作ります。たとえば、「ゴルフは一度やったんですが辞めざるをえない状況が起きまして...笑」というように、リアルなエピソードやその時の素直な気持ちで自己紹介します。そうすると、聞く人も、「ああ、こういう人が、いろいろ考えてプレゼンしてくれるんだな」と親近感を持てるし、共感しやすいと思います。
菊入相手を知り、1人1人を見て、自分の人となりを出し、互いにリラックスし、ということですね。プレゼンというより、語り合う場みたいな感じにするのが、極意なんですね。今日は、ありがとうございました。
本日ご紹介したルコックゴルフのホームページには、ゴルフが楽しくなるコンテンツが盛りだくさんですので、ぜひご覧ください!
http://www.lecoqgolf.com/